わかるわ~、その気持ち
お茶会や飲み会で、こんなことを言ったり言われたりしたことはあるでしょうか。
相手が考える「良いこと・悪いこと」や「解ったこと・悩むこと」を聞き、自身が「理解できるぞ」と判断した時にでてくる言葉です。
共感するということです。
自分が考えていることを相手が共感してくれたならば、「ほっ」としませんか。
相手の悩みを聞いていると「それは辛いよなぁ」と自分も悲しくなったりすることがありませんか。
私は、「共感は思いやりという善良さから生まれるとても素敵なもの」だと思います。
つまり、社会で生活している以上は欠かせないものといえるでしょう。
そうときたら、共感を最高に意識してどんどん思いやり精神でいきましょう!
と、言いたい流れですがそうではありません。
共感は、過剰に意識することで様々な苦しみが発生します。
共感疲労というものです。
共感を理解して、良好なコミュニケーションをおこないましょう。
- 共感とはなにか
- 共感疲労の対策方法
- 共感の育て方
本記事はコンパッションの重要な資質のひとつである「共感」について考察していきます。
- 「共にいる力」コンパッション(compassion)とはなにか
- コンパッションの5つの資質とはなにか
コンパッションに関する記事は、下記も参照ください。
共感とはなにか
共感は正しく理解し育むことで、とても良好な効果を得ることができます。
しかし共感に悩まされることも多く、その場合は心身が不良な状態になることがあります。
まずは共感について理解していきましょう。
共感の由来
共感は英語で「empathy」エンパシーと書きます。
由来は古代ギリシア語「empatheia」の「in内側」「pathos情念」から来ています。
in?
共感の意味
他者を自らの意識の中に取り込み、それによって他者が身体的・情動的・認知的に経験するであろうことを感じ取る力
「相手が考えていることを予測する力」と考えます。
そう考えますと、冒頭の「わかるわぁ~、その気持ち」という言葉は「理解できるわぁ~」の方がより意味としては良いのかもしれません。
「わかるわぁ~」は、自身の「近しい経験と照らし合わせて生まれる言葉」とでもいいましょうか。
理解できるわ~って言われたら、イラッとされることもありそう;
共感とコンパッションについて
- 相手を思いやる「コンパッション」は、他者のために感じる力です。
- 「共感」は、他者の内面を感じる力となります。
つまり、共感はコンパッションの前兆ということになります。
3つの共感
共感は3種類に区別することができます。それぞれの共感の例を見てみましょう。
身体的共感
- 他者の肉体的な感覚と共鳴し合うこと
- 親しい人にこそ共有が早いとされている
- 盛大にすっ転んだ人を見て、自分も苦痛の表情をする
- 鼻毛を抜いている人を見て、自分の鼻がムズムズする
- 友人が、手にしているケーキを落としそうな気がして事前に警戒する
- 敏感に感じて恐怖を抱く人もいれば、何にも感じ取らない人もいます
情動的共感
- 他者の感情的な経験を共感すること
- 社会的な結びつき・気遣い・洞察力を育む
- 悲しんでいる人を見て自分も涙を流す
- 他人の苦労を応援し成功を喜ぶ
- 健全な情動的感情は思いやりのかたまりである
- 自分が知らないことを尊重できる力が重要
- 相手をほんとうの意味で理解することはできません
- 決めつけてはいけません
認知的共感
- 他者の視点を通じて物事をみる(読心術)
- 他者の意見を取り込むことで自身の意識や考え方の幅が広がる
- 相手の悩みを聞き、自分なりのアドバイスを伝える
- 人を操る、判断を操作するといった悪用に使われることがある
共感疲労とは|対策方法について
共感を理解して育むことで、周囲の人へ思いやり(コンパッション)をもつことができます。そして、周囲の人たちはあなたに対して好感をもつことでしょう。
共感によって、良好なコミュニケーションができるのです。
しかし、共感を意識するあまりに自身にネガティブな影響がでることがあります。
共感疲労とは
- 苦しむ人との一体感が強いと、相手の苦しみに自分が吞み込まれてしまう
- 背負いきれないほどの苦しみから自分を守ろうとして、相手を見捨てることにつながる
相手の気持ちを考えよう、理解しようと思い過ぎるあまりに発生します。
共感疲労が起こるとストレス、燃え尽き、無感覚と言った症状がでます。
共感疲労が起こりやすい職種
共感疲労は下記職種で多く発生されるようです。
- 医師
- 弁護士
- 人道支援者
- 聖職者
悩みを伺うお仕事は、それだけ自分にかかる負担も大きいということです。
人道支援もたくさんの業種がありますが、介護士や〇〇ワーカーなどは本当に心労の絶えないお仕事です。
あたまが下がります、ほんと
上記以外にも「誰かのためになっている行動」というのは、時として負担となることがあります。
共感疲労対処方法
社会心理学者ナンシー・アイゼンバーグ博士は言います。
過度の共感疲労が制御されれば他者への健全な関心が活性化し、そこから思いやりやコンパッションが生まれる
Nancy Eisenberg
共感疲労を対処するには以下が重要となります。
共感疲労対策①
- 知ったつもりにならない
- ありのままを見届ける
- 他者の経験を尊重する
いくら理解をしたつもりでも、相手のことなど到底把握できません。
「私以外、私じゃないの」です
【参考】ゲスの極み乙女。2015年
- 相手の言葉・内容に集中しましょう。
共感疲労対策②
- 他者と自分の苦しみ、悩みの境界線を見失ってはいけない
- 他者の悩みは他者のものです。
- 他者の悩みに「自分ができるであろう」ことに集中しましょう。
共感疲労対策③
- 他者と一体になること、他者と自分を区別すること、この両方を組むこと
めちゃめちゃ難しいと思います。①と②をひっくり返すような言葉です。
???
筆者が思うに、「自分のできること」を理解しておくことが重要だと思います。
自分のスキル、ポジションでやれることを考える。そしてなにより「受け止められそうか」を考えることです。
自分を理解することこそが共感疲労対策の秘訣だと考えます。
共感を育むには|良好なコミュニケーション
最後に、より良い共感を行うためにはどうすれば良いでしょうか。
共感を育むことは、良好なコミュニケーションを得ることに繋がります。
身体的な感覚とつながる力をつける
- マインドフルネストレーニング
- 瞑想
相手の体験・悩みを感じ取るためにも、まずは自身の状態が良好でなくてはなりません。
昨今ではマインドフルネスに関心が高まっています。
マインドフルネスについて、またトレーニング方法については下記を参照ください。
マインドフルネストレーニングや瞑想によって、「自分の体内を感じ取る経験」を得ることができます。
自分の気持ちや感覚を深く知ることができ、更には他者の経験を感じ取る力が磨かれると言われています。
上記リンク先記事では「3分間呼吸法」を紹介しています。
ボディスキャン瞑想等、詳しくは下記書籍を参考ください。
- マインドフルネスストレス低減法(J.カバットジン、北大路書房2007)
傾聴すること
- 相手の話しに耳を傾ける
- 好奇心をもつ
- 自分の経験や記憶のフィルターをとる
- リラックスして聞く
要するに「人の話はちゃんと聞こうね」ということです。
相手が話している途中に、言葉を被せてくる人がいます。
私もやってしまいます。
「君の言いたいことはわかるよ」と言わんばかりで被せてきますが、まったくわかっていない人の特徴です。
そもそも相手のことなど完璧にはわからないのです。
それであれば、自分の偏見を捨てて相手の言葉をしっかり受け止めるべきです。
最後まで聞くことで、相手にも信頼が生まれリラックスすることでしょう。
「人の話は最後まで聞く」、良好なコミュニケーションの秘訣です。
もしかしたら、本記事の言いたいことは共感ではなくこれかもしれません。
共感をコントロールする
- 相手の考えと自分の考え両方を受け入れる
「共感疲労対策③」でも似たような言葉がでてきました。
相手の考えをバイアス無しで吸収しつつも、自分の考えも持つということです。
バイアス有るんかい、無いんかい
あくまでも相手の言葉はフラットに、クリアに聞きましょう。そのうえで、既にある自分の考えと比較したり混ぜてみたりしましょう。
お互い一人ではたどり着けない解答があるかもしれません。境界線は分けつつも新たな道を模索することです。
想像力を養う
- 今までと違う未来を想像する
- リスクを考える
前述の「共感をコントロールする」に近い部分があります。
自分の考えだけではたどり着けない想像をすることです。
共感することで、新しい発見があるはずです。
まとめ:ありのままで受け止め、自分のできる範囲で共感する
共感とはなにか、共感疲労とその対策方法、共感を育む方法と考察していきました。
最初にも記述しましたが、共感は人の基本的な良さから生まれる人間にとって必要なものです。
その良いとされる共感で、自身が「疲労しそう」と感じた時は立ち止まりましょう(遂行していることを置きましょう)
自分ができる事以上をやろうとしてはいけません。相手の悩みや出来事をありまま見つめてみましょう。
当ブログでは「人は誰かのおかげで生きていることを理解する」重要性を伝えてきています。
社会で生活する以上、コミュニケーションは必ず発生します。共感を理解して、負担のないコミュニケーションを行いましょう。
皆様が、より良く過ごせるようお祈りいたします。
参考文献
ありがとうございました